妊娠中のトラブル対応

今日はH病院の研修に来ています。土曜日に来たということでかなり喜んで貰えました。午前中は妊婦健診を任せていただきました。妊娠中には様々なマイナートラブルがありますが今回あたたった症例について紹介します。

・胃部不快感

妊娠後半になってくると子宮に圧迫されて消化器系の運動が阻害され、便秘や逆流性食道炎になってしまうことがあります。便秘の場合では便を柔らかくするマグネシウムや腸を刺激するラキソベロンが使用されます。胃部不快感がある場合はまずは胃の粘膜を防御する作用があるムコスタやテプレノンカプセルを使用します。また食事の一回量を減らし分割して食べるよう指導します。

子宮筋腫

胎児エコーで偶然発見されることがあります。5cm以上の大きさでは流産や切迫早産など各種の妊娠時合併症が増加するとされています。また筋腫と胎盤が接している場合には早剥のリスクもあがります。その他強い疼痛を引き起こすことがありますが、疼痛は1-2週間程度でおさまることが多いとされています。抗菌薬を使うことが多いようです。症状がなければ基本的には経過観察です。

・貧血

WHOの基準によれば妊婦の場合Hb11未満で貧血と考えられます。今回の症例では妊娠21週でしたが、前日に職場で立ちくらみのエピソードがあり本日妊婦健診で血液検査行ったところHb10.2となっていました。Hb10~11を軽症、Hb7-10を中等症、それ以下を重症とします。中等症以上では早産や低出生体重児のリスクがあるため治療介入が必要です。日本では軽症に対しても鉄剤の内服処方を出すことが伝統的に行われています。副作用等はないので処方で問題ないと思います。

・静脈瘤

子宮の増大により下肢の静脈が圧迫され静脈瘤が出来ることがあります。悪化を予防するため弾性ストッキングが使用されます。多くの場合出産後軽快します。

・asc-us

子宮頸癌検診で正常とも癌とも言えないような所見の事をasc-usと言います。子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が原因となって発症するとされています。HPVにも多くの種類があり、特定の種類(ハイリスクHPV)の場合子宮頸癌になりやすいことがわかっています。そのため癌検診でasc-usと言われた場合にはハイリスクHPVなのかどうかを検査します。陽性の場合には分娩後3ヶ月以内にもう一度癌検診を行います。陰性の場合には通常通りの期間で癌検診を行います。

 

なかなか本を読んでいるだけでは頭に入らないですが実際に診察すると理解できます。症例経験を増やし妊婦健診は問題ないレベルにまでなりたいと思います。